草稿 #11

孤独に耐えられないからこそ、己の内から出ようとはしない。幾重もの膜は、他の作り出したものであろうが、もう決して彼の力では破れなくなってしまっているのだ。言葉が記号に変化するとき、私はもう自失しているのか?悠然と眠る老女の傍で、私は不安に陥る、世界を論証するのではない。ただ救いというものが何であるのか探っているのだ。暗中で私はさ迷っている。何ものの光もなく、気配もなく、獣を捕らえるための罠のようなものもない。ただ拡がっている太陽なき地平をウロウロとさ迷っているのだ。裏切り、私は多くを裏切った。ゆえに苦難している。因果は応報にして難い。怖れ、何者の庇護も受けられなくなったとき、私は身を捨てることができるのだろうか。離脱、精神の統合、この相反する状態から遷移し、新たな身体へ移ることは可能であろうか。神話的文脈から産まれた数々の神が、たとえ一瞬でも、一ところへ集まったことなどないではないか。呼吸困難に陥ったとき、助けは遠かった。様々な薬剤も簡単には効果を表さなかった。精神による混乱は、果たして回復に辿り着けるのだろうか。私は間違っている。誰も責めはしないが、私は罪を犯している。お天道様はお見通しだ。ゆえに私には誰も声をかけない。寄らない。集落に作られた法に則って罰が下される。罰によって私は失われる。弱きゆえに許されていただけだ。たくさんの間違いを犯した。私の涙は薄汚い、汚れている。黒く錆びついた魂は清められることはない。世界の法則は非情だ。

草稿 #10

ひよりひよりと受け流す。鎮痛薬に頼る日々、遠ざかるように世界を去ることは存外に難しい。易々と許されはしないのだ。どんよりと曇った空は太陽から身を守ってくれてはいるが、太陽の恵みは遮られたままだ。悪意のある粒子を潰すのだ。粉砕するのだ。砕け、砕け、世界を開くのだ。忘我の境地に身を移すのだ。秋になれば秋桜が咲く。キンケイ菊は枯れ、また種を落とす。私はただ朽ちるのみ。何も落とさず朽ちるのみ、後悔も結局はこの道しかなかったのだと諭されるのみ。無痛、無苦、無病、無死、頭の混乱、吐き気、全てが己の在り難さを告げる。何に寄っても安定を得られないとき、絶望するのだ。なだらかな坂道を上るというのでもなく、斜面をゆっくりと落ちていくわけでもない。私は代わりのものが、本物でないことがわかるがゆえに、本物が手に入らないことを覚る。雨の中を走る自転車は、素裸の私を取り戻させる。一つの境界の内にある内臓が熱を孕んでいること、熱をもつがゆえに意識が存在することを教えてくれる。分厚い壁で守られている書庫の中に眠るのは、時間に蝕まれていく過去である。何の世界とも繋がらない孤立を、語る相手のいない孤独を、むき出しの絶望を燃やして灰にするしかないのか。なんとか日々を食いつないでいくこと、年老いた母を養っていくこと、これ全てが不具の者には荷が重かった。公平に訪れる死神に世界は揺らいだことがない。それが人の世の法から外れることであっても、仕方なく生きていくためには選ばなければならない時だってある。法則には例外があるのだ。簡単にはいかない。

ほの暗い光


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静かな海原の砂底に住むエビは

身を隠し、流れを待つ

 草陰で 待つ

何も持たず  待つ  生きるために待つ

 

彼の光とは  何か、

長年の     血脈のうちに失われた眼

彼の見る光とは 何か

動き続ける世界  で、 動かずに

 

 

草稿 #9

私には絶望が待っている。孤独が待ち受けている。弱さゆえにいつも脅えている。言葉さえも自由ではない。隠喩さえも浮かばない。そんな余裕も知恵もない。ないのだ、持ち合わせていない。絶望、退路は断たれ、前方も崖である。形に囚われてはだめなのだ。無形が優れているわけではない。自然とは形はあるが、無形なのである。私は雨を見るが、雨を知らないのだ。ましては太陽を知るわけがない。救われない。その嘆きも形ないものだから、誰も救うことはできない。逃走の果てに見出したのは果てしない死である。どこにも居場所がない。流れていくこともできず、拒絶、孤立電子対。肉体をえぐり取られ、私は解体される。言葉は私を救わない。なぜゆえに、彼は行き、やってくるのか?私は行くことはできない。向かうこともできない。何故ゆえに精神の不具なのか。誰も私の知るところではなくなったとき、私はどうするだろう。誰も振り向かない。私の世界に誰も興味を示さない。暗夜、私は漂うブヨ。誰か助けてください。雨の中を泳ぐ鳥。小瓶に入った毒薬。小さな呼吸に小さな鼓動。絶望とともに繋がれる命。バラバラに千切られた声明は意識を保つことはできるのか。人は一つの意識の中で右往左往する。乖離することなしに多数の自己を持つことはできない。合一性、不適格な能力。それらすべてが一人の現実を蝕んでいく。私は私であることができない。世界に孤独で産まれたとしても、それを不幸と呼ぶのか?苦しみは常に隣合わせだ。痛みは己が生きていることを思い返させる。しかし、それは生からの逃避も浮かび上がらせる。痛みは何故にここまで進化したのか?

草稿 #8

求心するエネルギーは黒い穴に通じている。糸が垂れてもその糸を信じられない者もいる。しかし、死が眼前にあれば、だれもが豹変するでだろう。アウシュヴィッツ。過剰なものが世界を救うのか?(脱出するためには究めることだ)空腹に耐えながら歩き続けどもたどり着けなかった時、果たして超越できるのか。もの言わぬ子、空想しかできぬ子らは誰が救うのか?生きている世界で髪を求める。天と地を求める。不条理ゆえにルールを定める。一定の、あるところで線を引く。流れゆく中で失われた自己を取り戻す。一体となって世界を取り戻す。子らの見ていたものは何か。幻想と産まれた空想は戯れ、輪を成す。夢游するようにするように魂ー意識を解放させ、外界との融和を試みるのだ。合一。語るべき言葉のない世界へ並行して泳ぐものが、彼の孤独を埋める。そこに神が必要ないと言えば、神は存在しないことへの道となる。並行して彼とある。体温が上昇する段階で寒気がするのは、対称する己に奪われるからである。対称が己/彼なら果たして世界ー風景は鏡面構造を成しているのだろうか。有り様のない心象を果たして映像として具現化できるのか。夏の暑さが失われてくる秋の夜に、熱情も失われるのだろうか。朽ちていく家に住む者は、朽ちてゆく己の細胞とともに精神も衰えていくのだろうか。

草稿 #7

食虫植物は生い茂り繁殖する動物は新たな萌芽を迎える。孤独におびえる中年の男は、そのひ弱な肉体と虚弱な精神が苛烈な競争に敗北し、ひっそりと朽ち果てるのである。年老いた母の老いさらばえた悩みに己の無力さを痛切に感じ、そのままの生活は続かないという現実を悟るのである。孤独相に追いやられた者は、その暗き穴の中で狂人と化す。今生の世界に未練はあるのか。言語にならざる言葉の呻きが聞こえるか。絶え間なく汚染されてゆく空気に耐え続けることができずに、どうにか助かろうと手を伸ばしあがく。毎日が連続する間断なき射撃、絶滅をさけられことはすべての生物に言える。再現のない孤独相に落ちた男は行きずりの相手もおらず、ただひたすらに時間を空費する。ただ脅え、苦しむのみの惨めな生活を送り、過去に断罪され、助かる当てもないーあてがないのは当然だ。当人に全く努力がない。行けども行けどもというのではない。全く動いていない。転がっていないのである。誰からも声がかけられないのを不思議に思っているようでは助からない。そこに老人の原型いるだけである。世界は動いているのに小さな居室で何がわかろうか。助けてほしくば声を上げろ。革命を起こしてみろ。しかし、と続くならばもう終わりにしたい。彼はどうしたいのだ。刹那的な所業は、決して報われない。巨大な像を建立したのはなんだったのか。気の迷いであったといえば、全てが理解できるわけではないのだ。異臭ただよふこの部屋で私ははたして彼のようになれるのか。世界には私よりもたくさんの知識を持っているものが溢れているのだ。何に近づけたのだろうか。私は私のうち以外は知らない。私さえも何者か知らない。私が何者かであるのは、存在によって意識かされている。寝てしまえば、無意識になるが、それも所詮、存在しているが故の無意識である。他人からも誰からも存在を確認できなければ、それはの己の存在が他の存在と境界線があることを認識するであろうが、私は言葉を交わすことができる。ゆえに、他の存在と同じように存在と非-存在を抱えているのである。積み重ねてきた存在としての時間は私が惑うことなき存在であることを確信させるのに十分である。ここにいるのは誰か?という問いに私は動揺するかもしれないが、内心では認めているのである。花火は散った/何も残さず/いや光とともに闇を残して/私は地球が動いているのが信じられない/いや天が動いているのも信じられない/世界が動いているのは当たり前なのに/私は動かずに世界を捉えようとしている/呆れた所業だ/いつか通じ合えるのだろうか/宇宙と/隔てている電離層を抜け/地上の魚たちと/私がたわむれているように/星々の間をあるくことができる日は来るのか/ひとを信じるように時を信じて待ってみようか/どこまでも続くこの踊り手の指先のように/惑うことのない世界を「とらえることなど不可能に思える。立体的な視座を持たない私に、何を語ることができるだろうか。私は私の妄想の中でしか生きることはできないのでだろうか。持たざる者は息絶えるまで持たざるものなのだろうか。