回遊魚

血管を流れてゆく私は
命というものが
果たしてなんなのかわからない
まどろみの池に溶けながら
夏の日射しは樹々に命を与える
その命が果たして何なのか
わからない

透明なガラスの器に浮かぶ水滴が
蒸発してしまった後、残された私は
独り血管の中を巡ってゆく
青く浮かびあがる影に
私は海を見る
孤独というものが
今を飲み込むのなら
眠りの中で
再び海に還る

風に吹かれて滅びる者が
過去の人なら
私は再びよみがえりはしない
散っていった季節も
センチメンタルな電話を待っている
私がどこにいようとも
訪れる人だから