草稿 #18

私の島、私の領土、私の家、私の庭、それらに続くものに私は権利を有しない。私は私の姿を知ることができない。眩しき太陽、暗い闇夜、それらがいつからか消えてなくなった、光は繁殖し、街中を照らし続ける。番犬のように。黒き者宿りし光、太陽は小さな点となって消える。人類はマイノリティに過ぎない。

 

神が目を覚ます。分裂していた至る所の神が目を覚ます。鳥がやってくる。神は神をもたらす。社からあふれた水は、集落を流し去る。人はいらない。多様性を取り戻す。神は神の中で時間の軸を短絡させる。私には想像力がない。妄想も一時しか現れない。世界の変容の速度に追いつくことができない。それゆえに私は世界から置いて行かれる。私はそこで朽ちてゆく。砂になる。砂漠の誕生である。熱い砂に生物は耐えられない。砂漠に人は住めない。雨を呼ぶために人々は祈る。禁忌を作り、生贄をつくり、コミュニティを強制する。古典を生成するために時間を重ねていく。人のいない空間に人が訪れた時、人は独りよがりに感動する。生成された時間に何の敬意もなく蹂躙していく。ペア、家族、集落、人は礼賛する。私は人であるがゆえに絶望する。人でなければならない時間が私を破壊してゆく。

 

草稿 #17

搾取されるものは皆、マイノリティに片足を突っ込んでいる。巨大な人類は無闇にエネルギーを消費する。巨大な鯨は私の獲物ではない。過剰なコアは多くのエラッタを吐き出す。数種類の枝は新たな方向へ力能と線ーベクトルを伸ばす。長年の孤独が産み出したものは、人間的生活の廃棄物。許されたのは一通の手紙。すべてはその手紙の内容にかかっていた。私は恥をかかなければならない。もっと多くの恥辱にまみれ、赤い肉をむき出しにして私をさらけださなければならない。もっとも多くものは昇華されている。わずかな残された時間のために、犠牲を十分に負わなければならない。私の力能はコンパイルされたコードのように羅列され、美しい。年老いた母に十全な生活を送らせてあげることができているのであろうか。やはり私は去り、兄弟との新たな生活を選んだ方が彼女にとってよいのだろうか。捨ててきたものは、抱えきれなくなったものである。十分な言葉ではなく、舌足らずの切れ切れの単語。単語の連結を発するのが精いっぱいである。

darkside of darkness

考えることを止め

服を脱ぐ

素裸で歩く

 

誰の目も気にせず

人の目で

私は剥がされていく

 

皮膚の内側にある

肉が

肉の内側にある

種子が

明らかにしていくのは

私の思想でもなく

私の感情でもなく

私の無

 

私の無を

明らかにするために

私は素裸で走る

心臓の鼓動が

私の無に

リズムを刻み始めるまで

走り続ける

 

その先にあるもの

無とは

なんなのか

見たいがために

私は

鼓動することを

自分から

投げ出したりしない

 

私が終わるまで

服を脱ぐ

 

無とは

ないことなのに

あることのように

見ることは

できないのに

服を脱ぐ

 

草稿 #16

重たい頭を抱え思考する時間は言語的になりがちである。結び合う子供の欠落の縫合は、表面を癒着させることで行われる。癒着はいびつな傷跡を残すが確実に結合を果たす。横断的に思考を時間で測るなら断絶的な生物的死によって我々は必ず途上で身を捨てられる。千切りのような裁断があきらかにするものー緩慢な思索と現実。市民権を持たない者の生活の連続性の無さー不連続な有り様、悪意無きマジョリティの残酷さに向けられるアレルギー的ショックーアナフィラキシー症状。うすら暗い部屋の中で起こりうる停電。打ち捨てられた光源なき世界。あまりにも貪欲な母。歯止めの効かなくなった購買欲。双極性的気質。

草稿 #15

 層と線ー遠くから見れば線にしか見えなくても近づけば層になる



集団を作ることによって個を支配しようとする試みは、少年期によく見かけられる。個と個では大きな違いは現れなくても、集団ー徒党を組むことで優位に立つのである。マイノリティは個である。徒党はマジョリティの一歩である。憎悪が集団になると機械が動き出す。巨大兵器となり侵食を始めるのである。

草稿 #14

 元々、存在していないのである。私の言葉などというものはない。創造的な活動ではない。ただインプットをアウトプットするだけ。線形である。多相ではなく単相。秋の虫の鳴き声は、多相を織りなす。悠久の永久凍土も徐々に崩れていく。時間というものと存在しているものは動き続ける。永遠の停止から永遠の運動へ移った瞬間、私達は産まれた。

 突然の発生、光の侵食、闇を追い払う者、色付き始めた秋の葉のように宇宙は様相を変えていく。次元が増えるごとに自由度が上がっていくように私たちは3次元を超えなければならない。失われたものよりも多くのものを獲得するのである。理解できない答えを発する者に対して、それを受け流すこと、一旦すべてを受け入れて、己の間違いに気づくまで待つのである。中断、突然の割り込み、不吉を感じさせる到来。可能であることと不可能であることの断絶を理解しない者たちは、蹂躙している意識がない。言葉一葉でマイノリティが窮地に立たされることを理解できないのであろう。弱り切った脳が、行動をさえぎることさえ理解していない。薄暗い雲が壁となって、光を遮る。灰色のスケールは、不安を提起する。乱れ、雲の中で、地上との不和と調律が生み出す乱れが、閃光を放つ。閃光の線、乱れた雲、力能は空と地、海をつなぐ。殺せばいいのか。雷撃は破壊と生成を生む。破壊はいみじくも現在であることを表している。

草稿 #13

少しずつ失っていく、少しずつ死んでいく。果たしてこの道は続いているのか。それとも突然なくなってしまうのか。突如道に怪物が現れるかもしれない。無意識に自失は進み、さらに目の前の怪物に肉体を裁かれる。感覚の悪化、無感覚ではなく壊疽していくような苦しみ、懊悩、嗚咽、痛覚が己を支配していき、ありもしないものが現れる。幻影、ファントム。舞台装置が動き出す。孤独のうちに分断された箱の中で声は発せられる。届くものは振動の系譜、歴史の及ばない人生のうちに、私は積み重ねてきたものを手放す。エトスの更新は破たんする。ほどけてしまった戒律から見えてくる元素、全体と原子の視点の移動、フラッシュバックのように移り変わる像に果たして視力がついていけるのか、様相の生み出すものは開闢のためのイマージュである。双頭の鳥は4つの目で世界を見ることによって人間の持たない高次元の世界に触れる。犬、猫、鹿、猪などの動物における世界はそれぞれ違う。私は私の視点しかしらない。あとは想像するのみである、ある器官からある器官へと移る様相を私は知らない。